酒の売却に込める禁酒の決断

投稿者: | 2020年2月11日

男はすっかり酒浸りの生活を送っていた。

仕事を終えて帰宅すると、自宅の酒棚を眺めて「今日は何を飲もうか」と考えるのを楽しみとしている。

ネットや本で酒について勉強する時間も増えた。そのお蔭で依然と比べて様々な酒の種類や銘柄の名前、特徴などに詳しくなっていた。

そうして、男がいつものように酒を楽しみながらネットで酒について勉強していると、偶然、酒買取サイトに巡り合った。彼は今も貴重な酒のいくらかを抱えており、興味本位で開いたのだ。

相変わらずジャパニーズウイスキーの高騰は続いているらしい。せっかくなので自分が持っている物についても調べてみよう。

「前よりも更に上がっている……凄いなこれは」

男は以前見た金額よりも更に上昇していることに驚きを隠せない。希少な酒の中には既に開封してしまった分もあるが、未開封のまま取っている分もいくらか残っていた。

「あの時は禁酒する為に調べていたんだったな」

男はその時のことを思い出す。酒を飲み過ぎたことで大きな失敗をしてしまい、禁酒する為に手持ちの酒を売ろうと考えていたのだ。結局は高騰している希少な酒達の誘惑に負けて、禁酒は断念、そして今では以前にも増して酒を飲む日々となってしまっていた。

「今、こうして見たのも何かの縁なのかも知れない……」

そんな風に考えた男は、酒棚に目をやって熟考する。

今度こそ手持ちの酒を全て売ってしまい、禁酒しようか。いや、せっかくこれだけ集めて、色々と勉強もしたのに。高いものだけ売って、気楽に嗜んでも良いのではないか。

しかし、貴重な酒となると、やはり飲みたくなってしまうのが人情。ならば、売ること自体が間違いではなかろうか。

彼は同じような思索を入り組んだ迷路のようにグルグルと繰り返す。このままでは答えが出ようはずもなかった。やがてはなし崩し的に再び酒を受容することだろう。

しかし、彼の中には以前の失敗への悔恨が今も残されていた。今の自分は既に酒にのめり込み過ぎている。これではいつあの時と同様の失敗をしてしまうか分かったものではない。

「……今度こそ、売ることにしよう」

男は遂に手持ちの酒の売却と禁酒の決断をした。決意が鈍らぬ内にちょうど見ていたSAKEURYという酒買取サイトを利用することにした。翌日には自宅まで買取査定に来てくれるようだった。

「何か酒以外の趣味を見つけることにするか」
そう呟いた男の顔はどこか晴れ晴れとして見えた。